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今はほとんど指さない将棋ファンです。角換りを中心に思うところを書いていきたいと思います。

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第36期棋王戦第1局 ~7手目▲76飛の菅井新手をめぐって 
2月6日(日)に行われた第36期棋王戦第1局は、先手の久保二冠が▲76歩、△34歩、▲75歩、△84歩、▲78飛、△85歩に▲76飛と7手目に飛を浮く大胆な戦法を採用。この指し方は、久保棋王の弟分の菅井四段が昨年11月25日の王位戦予選で谷川九段相手に採用した戦法だ。本局は角交換から乱戦になったのち、先手が後手陣を激しく攻めたて、89手で挑戦者の渡辺竜王を投了に追い込んで幸先の良い1勝をあげた。


石田流から7手目に▲76飛と浮く指し方は、上記でも述べたように昨年11月に菅井四段が公式戦で採用したため俗に“菅井新手”とされている(とはいえ明治期に阪田三吉の若いころの実戦ですでに指されており、厳密には新手ではない)。後手から角交換して△45角の両成りが見えているだけに大胆極まりない構想である。実戦では△88角成、▲同銀、△45角、▲66飛、△27角成、▲74歩、△同歩、▲55角、△22銀、▲36歩、△26馬、▲58王、△54歩、▲82角成、△同銀、▲63飛成と進み、先手も面白い局面となったが、逆転で後手の谷川九段が勝っている。


菅井四段と奇しくも同じ構想を考えていた久保二冠は、1月13日のA級順位戦7回戦の対郷田九段戦で自らこの戦法を用いる。2月2日(水)から毎日新聞朝刊でこの将棋が解説されているので棋譜を追うと、久保二冠の7手目▲76飛を見た郷田九段は△88角成、▲同銀に△62銀とするが、直後の▲77角の応接に苦しむ。41分の考慮の末△22角とするが、▲48王、△42王、▲38王、△32王、▲28王、△72金、▲38銀、△42銀、▲78金、△94歩、▲16歩、△14歩と組み合った後、先手の久保二冠は▲22角成、△同王、▲74歩から後手陣に襲い掛かり、85手で勝利している。


また、2月3日に発売されたばかりの将棋世界3月号の「新・イメージと読みの将棋観」でこの菅井新手がテーマとなっている。まさにタイムリーな局面なのだ。

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その記事で渡辺竜王は、▲76飛は若干無理気味だと思う。と述べ、実戦で指されたら△88角成、▲同銀、△22銀とし、△45角は打たない、としている。先手の研究に嵌ることはない、という割り切りがいかにも竜王らしい。
一方、久保二冠は、▲菅井ー△谷川戦での▲63飛成までの手順は2・3年前に考えていた、と述べ、この順なら先手を持つ、と新戦法の研究に自信を見せている。そして後手としては△88角成、▲同銀、△22銀とするのが無難だが、それでも急戦に持ち込む手が成立しないかどうか、考えているところ、と正直に話している。その考えていた順のひとつが本局で披露された。


7手目▲76飛に後手の渡辺竜王は宣言どおり△88角成、▲同銀、△22銀と△45角は打たない方針。それに対して先手の久保二冠は▲77桂。以下△33銀に▲74歩、△同歩、▲46角、△64角、▲同角、△同歩、▲63角から先手は馬を作ることに成功。その後も先手の久保二冠は積極的に後手陣を攻め続け、後手のミスもあって89手で快勝した。

タイトル防衛のための大事な開幕戦に新戦法を披露して勝利、とはいかにも大胆な久保棋王らしい。(そういえば同じ石田流の新手順▲75飛が指されたのもおととしの棋王戦での久保八段(当時)によるものだった。)華麗なさばきだけではなく、タイトル戦で羽生名人や佐藤九段に対しても一歩も引かないねじり合い・乱戦での強さが本局でも遺憾なく発揮された。


この7手目▲76飛が成立するのなら、後手の居飛車党にとっては新たな課題を突き付けられたことになる。
先に紹介した「新・イメージと読みの将棋観」で森内九段がいみじくも述べているように「そもそも後手の△85歩は▲76飛型を作らせないための作戦なので、この手が通ってしまうと根本的な見直しを迫られることになる」からだ。

△45角で馬を作られるからダメ、で研究を打ちきらずにその後の可能性を考えることで、石田流という古くて新しい鉱脈にまた新たな広がりと奥行きがあることが証明された1局だった。








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はじめまして、よろしくお願いします。
ものすごく詳しく書いてますね!
升田先生のテレビの特集で、
谷川先生が升田先生の将棋を
詳しく説明しておりました。
テラゲン合格! | URL | 2011/03/08/Tue 20:21 [編集]
コメントありがとうございます
コメントありがとうございます。
先日放映されたNHK教育TVのこだわり人物伝の「升田幸三 伝説の棋士」ですね。
石田流も升田九段が名人戦で用いたことにより、
それまで奇襲戦法とされていたのが、本格戦法としてプロに認知されるようになりました。
升田九段の偉大さ・先見の明がよくわかる番組だったと思います。
kurouma | URL | 2011/03/09/Wed 01:05 [編集]
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